暖かくなってくる頃から県内あちこちの国道添いに見かけるパラソルが目印です。アイスともかき氷とも違うさっぱりした口当たりとしつこくない甘さが特徴のアイス。おばちゃん(ババ)が金属のヘラで盛りつけてくれます。
旬 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
ピンクと黄色のハーモニー
ババヘラ・アイスといえば、秋田では日常的に見られる風景です。道端やイベント会場にカラフルなパラソルを広げ、のんびりとしたおばちゃんがお客さんを待っています。彼女たちの存在は、安心感と勇気づけ感を与えてくれる存在です。
秋田のご当地アイス、ババヘラは、ピンク(いちご味)と黄色(バナナ味)のシャリシャリとしたシャーベット仕立てです。注文を受けると、彼女たちは器用にヘラを使ってアイスを盛りつけます。まるで花のバラのように見立てられたこの盛りつけは、「バラ盛り」として人気を博しています。
一口食べると、すっきりとしたシャーベットの食感。いちごとバナナの味わいが懐かしく、子どもの頃の思い出を思い起こさせます。この不思議な感覚が、ババヘラの魅力なのでしょう。
秋田県内には数社の会社が道端でアイスを販売していますが、どれもババヘラとして愛されています。昔懐かしい味が秋田県民のソウルフードとして親しまれています。
バラ盛りを考案したのは、約60年間ババヘラの味を貫く進藤冷菓さんです。ピンクと黄色の花びらのように盛りつけるこのアイデアが大ヒットし、定着しました。味だけでなく、おばちゃんの職人技まで楽しめる素晴らしいアイス。彼女たちの技術は本当に凄いのです。夏の定番として、祭り会場や海水浴場でも楽しむことができる、秋田の魅力を詰め込んだアイスなのです。秋田に訪れたら、ぜひ味わってみてください。
ババヘラは、秋田県でよく見られる露天販売の氷菓の一種で、「ババヘラアイス」とも呼ばれ、一部地域では「ババベラ」と発音されます。
ババヘラは中年以上の女性(ババ)が、金属製の「ヘラ」を使ってコーンにアイスを盛ることから名前がつきました。夏場に多く出店され、夏の秋田の風物詩となっています。
販売員はビーチパラソルの下に座り、ドラム缶やミルク缶状の保冷缶にアイスを入れ、客の注文に応じてコーンにアイスを盛ります。通常はバナナ味とイチゴ味の2種類を交互に盛りつけますが、「名人のババ」による花のバラの形態に似せた「バラ盛り」もあります。
ババヘラは路上だけでなく、道の駅やサービスエリア、スーパーマーケットの駐車場などにも出店されることがあります。家家駆けと呼ばれるスタイルでは、台車やプラスチックケースに入ったアイスを持ち運び、戸別訪問販売を行います。
また、ババヘラの新商品も登場しており、アイスキャンデーにしたり、モナカに詰めたり、家庭で楽しめる「ババヘラ・セット」もあります。ただし、イベント販売の場合は近隣地域によっては直接盛り付けを禁止することがあり、別の販売スタイルが求められることもあります。
製法
ババヘラは業者によって異なる製法がありますが、一般的には以下の原料を使用します。
脱脂粉乳の量を調整することで、アイスクリームに近いまろやかな舌触りやシャーベットやかき氷に近い爽やかな舌触りを実現しています。季節や商品によって配合を変えるなど、工夫がされています。
進藤冷菓では、特有の工夫があります。機械から出来上がったアイスを金属バットで突き、空気を抜いてシャキシャキ感を出す方法を考案しました。金属バットは空気抜きに適した重さであり、他の道具を試しても同じ効果が得られなかったため、現在でもこの方法を使っています。
歴史
ババヘラの歴史は1948年に遡ります。児玉冷菓の創業者である児玉正吉が冷凍機を導入し、アイスキャンデーを扱う露天販売を始めたのが起源とされています。八郎潟周辺には販売業者が集中しているのは、かつて八郎潟で漁獲された魚の販路に関連していると考えられています。1958年には発泡スチロールを使った保冷装置が開発され、数年後に現在の保冷缶形態になり、一日中の路上販売が可能となりました。
初期のババヘラのアイスは白色一色でしたが、後に黄色(バナナ味)と赤(イチゴ味)の2色に変わりました。1974年ごろには道路沿いでの販売が始まり、販売員は交通安全の幟を立てるようになりました。ババヘラという呼称は1979年ごろに広まり、初期は「ババ」という言葉が侮蔑的な意味を持っていたため、客は販売員にそう呼ぶことはありませんでした。しかし、商標登録によって業者と販売員自身が「ババヘラ」と名乗るようになりました。
2005年には大阪市のアイス博覧会に特別出店し、売り上げ第一位となりました。2009年には食品衛生法の施行令改正により、ババヘラは喫茶店営業(露天)の要件を満たすことになり、正式な営業許可を取得するようになりました。ただし、販売場所については地権者からの許可を得て私有地を使用する必要がありますが、一部の業者が公道上での違法な販売を行っているため、問題になることもあります。
露天販売
ババヘラは、農家の女性たちが農閑期の副業として行う露天販売で、特有の姿と服装が由来しています。農作業向けの長袖シャツと頬かむりは日射し対策のためであり、現在ではババヘラのユニフォームのような存在となっています。近年ではアイスの色に合わせた専用の黄色とピンクのエプロンや三角巾を使用する販売員も増えています。
販売員たちは朝早くから送迎車に乗り込み、天気予報やイベント情報に基づいて秋田県や隣県の幹線道路脇などの販売箇所に向かいます。通常は日が暮れる前に販売を終え、送迎車で帰宅します。
ババヘラの販売員は高齢者が主力であり、平均年齢は70歳以上です。若手の販売員もいるものの、高齢者が多いため「ババヘラ」という名前が使われています。イベント時にはアルバイトも雇われることがあります。若い女性が売る場合は「ギャルヘラ」または「ネネヘラ」、年齢が中間の場合は「アネヘラ」と呼ばれます。男性が売る場合は「ジジヘラ」「オドヘラ」「アニヘラ」と呼ばれることもあります。
ババヘラの缶に巻かれている垂れ幕の表記は統一されておらず、さまざまなものがあります。進藤冷菓が「ババヘラ」の商標を持つ場合は専用の帯を使って表記していますが、他の場合は様々な表記があります。