秋田県仙北市にある、神代(じんだい)地区は、有機米あきたこまちの生産が盛んな稲作地域。ここで生産されるおいしいお米と、昔ながらの製法で作られたカレーが出会い、「あいがけ神代カレー」が生まれた。
小麦粉とカレー粉を炒めて作る、懐かし家庭の味を復活させた「昔風カレールー」と、デミグラスソースベースの「欧風カレールー」を合い掛けにしてあるのが特徴。
トッピングには温泉卵をのせ、つけあわせには大根を燻製にした秋田名物の漬物「いぶりがっこ」を添えればできあがりだ。
カレーの発展
1950年代後半以降、秋田などの東北地方の田舎にもカレー粉が普及しました。特に神代地区(当時は神代村)でも家庭料理としてカレーが広まりましたが、当時は牛肉や豚肉などの畜肉が手に入りにくかったため、魚肉の水煮の缶詰や魚肉ソーセージ、地元産の野菜を使い、鰹節や煮干し、昆布などでとった出汁をベースにした醤油味の和風ブイヨンで煮込んでいました。
また、フライパンで少量のカレー粉と大量の小麦粉を炒め合わせてルゥを作り、それを練り上げてカレーのソースを作る方法が一般的でした。
当時のカレーソースは現代のカレーと比べるとコクや香辛料の香りが控えめで、食後にウスターソースをかけることが一般的でした。
しかし、山間部で入手できる香辛料が限られていたため、子供たちにとっては特別な家庭料理として人気を博しました。
その後、1960年代中盤以降になると、「バーモントカレー」(ハウス食品)や「ゴールデンカレー」(エスビー食品)などの固形ルゥの市販普及により、かつての調理方法はほとんど行われなくなりました。
しかし、昔ながらのカレーは現在の一部の家庭において「お婆ちゃんのカレー」または「父ちゃんのカレー」として受け継がれ、今日まで残っています。
神代カレーでは、1950年代から1960年代の製法を再現し、具材には魚肉ソーセージやにんじん、じゃがいも、タマネギなどの地元産の野菜、さらに昔風のエリンギなどを使った和風カレーを提供しています。
また、デミグラスソースをベースとし、タマネギと主に八幡平ポークを使った現代風の欧風カレーも提供されています。両者を組み合わせた神代カレーは、片面だけ焼いた目玉焼きや半熟卵をトッピングし、福神漬やらっきょうの代わりにいぶりがっこ(たくあんの燻製)を添えるのが特徴です。